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今日のイベント「震災後を語るー擬似的戦後の思想/文学」に際して

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いよいよ本日29日は、2.5Dにて大塚英志さんと橋爪大三郎さんをお呼びしてのトークイベント「震災後を語るー擬似的戦後の思想/文学」の当日だ。

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震災後の数週間、世の中の様々なことが変化し、その変化がさらに加速度を増していくような途方もなさを感じていたことを覚えている。被災地から離れた当日の東京の街では、帰宅難民者が溢れ、電車が止まり、車が道路を占拠し、電話は通じなかった。その代わりに人々はソーシャルメディアを利用して連絡をとりあい、励ましあっていた。


個人が自由に発言できるメディアの登場は、多くの可能性とともにその弊害を持ち合わせたまま一般化していったように思う。ある人はもっぱら友達と会話をするために使用し、ある人は情報を得るための手段として使うなど、選択肢を多く備えたプラットフォームでは、それぞれ自分自身のために編集した世界が無数に存在していた。自分にとって、関係のありそうなものや興味のあるもの、身の回りの最低限のものと関係していれば、それでなんとかなっている。そんな空気が、気づかないまま当たり前のものになっていたような気がする。そんな時に起こった震災というのは、一時的に(かもしれないが)ほとんどの人が同時に同じ風景を否が応にでも共有させられ、この状況に関係させられた出来事だったのではないか。そして、少しでも力になればと、ある人は被災地に出向き、ある人は足を運べない代わりに物資やお金を送り、またある人は原発に対して異を唱え休日の街を練り歩く。


震災がこの国を一変させた、という報道がたくさんなされた。現にいまも原発の問題は継続しつつあり、多くの方が亡くなりこれまでのような暮らしが難しくなった被災地の復興にも時間が掛かっている。そんな被災地には多くのジャーナリストや言論人、アーティストが入り、それぞれの仕方でこの状況について表現を試みている。また、カルチャーの領域でも、震災や原発を扱った作品が人の目に触れ始めた。多くの作り手が、この変化を余すことなく自らの言葉で記述することに作り手としての何かを賭けているようにも感じられる。
ただ一方で、東京では一時的に電気、水、米が不足したものの流通はすぐに回復。今では不気味なくらい、これまでと変わらないそこそこの日々の暮らしを取り戻しつつあるようにも見える。何よりも、今回、こうしてつつがなくイベントを企画できていることがそれを示しているだろう。

では一体、震災は何を変え、何を変えなかったのか?
そしてその変化に呼応するように、震災や原発をテーマとして記述された思想や文学が、今を生きている人たちに対してどのような価値と意味を持ちうるのか。
そして我々は、それらをどう受け取り、いまだ閉塞状況にあるこの社会のよりよい姿を考えればいいのだろうか。


個人が自立した主体を持ち、学びながら自分の言葉で他者とのコミュニケーションをとることが、幸福な社会を形成するために必要だという考えをお持ちの橋爪大三郎さん。
閉塞する社会の第三項として、考え方の違う人同士が立ち会う場を考え、そこに向かう双方のコミュニケーションのプロセスこそを重要視する大塚英志さん。
お二人のお話を通して、震災以降の世界と、思想/文学のあり方について考えてみたい。

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日時 : 10月29日(土) OPEN 19:30 / START 20:00
登壇 : 大塚英志×橋爪大三郎
司会 : 武田俊(KAI-YOU)
観覧料: ¥1,500(ドリンク別)
リンク: http://2-5-d.jp/schedule/20111029/
予約 : http://2-5-d.jp/schedule/20111029/#reserve-form