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『メイドインアビス』が支持される本当の理由 まだグロマンガだと思ってるの?

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こんにちは。毎週水曜日に社内で行っている「なんでもプレゼン」の様子を編集部・森田がブログに公開しています。

今週発表をしてくれたのは、マーケティング部のニゲロオリゴ糖さん(@revym92rg)です。

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ニゲロオリゴ糖さん(撮影:ZEPETO)

ニゲロオリゴ糖さんはKAI-YOUゲーム部の部長としても活動しています。ゲーム部はYouTube不定期で実況を配信しているので良かったら活動を覗いてみてください。


【オーバークック】木曜日仕事終わりに社畜ゲーする

そんなニゲロオリゴ糖さんが発表してくれたのは、2017年にアニメ化もされた漫画『メイドインアビス』です。本作はKAI-YOU社内でも度々話題になる人気作品です。

今回の発表では単なる作品紹介だけではなく、ニゲロオリゴ糖さん独自の考察により非常に興味深い内容になっているので、すでに読了済みの方も必見の内容になっています。

メイドインアビスとは?

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メイドインアビス』は、つくしあきひとさんによる作品(既刊7巻・連載中)。

少年型ロボット・リグと共に命がけでアビスという大穴に挑む少女・リコの活躍、そしてナナチとの出会いが描かれる冒険ファンタジーです。

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画像はメイドインアビス1巻表紙より

絵本のような絵柄とは裏腹にグロテスクな描写も頻出することからグロ漫画というレッテルを貼られがちな本作ですが、このブログを最後まで読めば、その認識は覆されるかもしれません。

メイドインアビスで描かれる未知

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画像はメイドインアビス1巻より

メイドインアビス』のテーマは「未知」だと定義するニゲロオリゴ糖さん。

物語は、アビスの深層に行きたいと強く憧れていた主人公・リコのもとに、ある日、行方不明になっていた母親からの手紙が届くところから始まります。

リコは一度進めば二度と戻ることができないと知りながら、未知の大穴・アビスへと足を踏み入れていきます。

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画像はメイドインアビス1巻より

メイドインアビスの世界には「上昇負荷」というアビス内に入った人間にのみ襲ってくる症状が存在します。

回避不能な症状とされている「上昇負荷」は、ある階層からは“死に至るため”帰還が不可能とされています。

またこの「上昇負荷」という要素は物語をより味わい深くしており、作中で一番重要な設定といっても過言ではありません。

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画像はメイドインアビス(左:1巻 中央:3巻 右:4巻)より

アビスには奇妙な生物が生息し、未知の遺物が眠っています。

特に特級遺物と呼ばれているモノは、「人・生物を生き返らせる」「自分の精神をほかの人や生き物に植え付ける」能力があったりと人知を超えた力を秘めています。

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画像は(左:2巻 中央:2巻 右:4巻)より

また「メイドインアビス」には、一癖も二癖もある個性的な「白笛」と呼ばれる称号を持つキャラクターたちが登場します。

彼らの存在も物語をより引き立てる存在です。

芸術(フィクション)について

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ここで閑話休題。話はちょっと脱線し、ある別の漫画の紹介です。

漫画『マンガ家再入門』は、中川勇さんの作品。著名漫画家やクリエーターの方々に取材して聞き出した「創作の秘訣」をもとに、ストーリー漫画家として再デビューを目指すというドキュメント漫画です。

90年代初め、大衆はフィクションに対して「よくわからないもの」を求める傾向がありました。しかし、地下鉄サリン事件阪神大震災を経て「理解できるもの」「答えがあるもの」をフィクションに求めるの流れができたことが、この一コマでは描かれています。

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続いて紹介するのは1930年代の「シュールレアリスム」を代表する作家ハンス・ベルメールという作家。

シュールレアリスム」とは、夢や幻想など非合理な潜在意識の表現によって,人間の全的解放をめざす芸術運動です。

簡単に言うと人間の「無意識」を探求しようというもの。

1930年代頃まで提唱されていた「人間の理性が素晴らしい」という共通認識は、第一次世界対戦や化学兵器など「過酷な環境」との遭遇によって崩れはじめ、その結果、理性に対する絶望が起こりました。

そして理性の反対にある無意識を求める人たちが現れるようになったのです。人々は過酷な時代において「シュールレアリスム」という概念に希望を見出したというわけです。

この流れこそ『マンガ家再入門』で描かれた「時代や環境によって人が求めるフィクションは変わる」ということの実例の一つです。

(※こちらはあくまでニゲロオリゴ糖さんの持論です)

“未知”は、現実に絶望しないための希望になり得る

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画像はメイドインアビス(左:3巻 右:5巻)より

メイドインアビス』では前述の通り、上昇負荷や凶暴な生き物、癖のある白笛たちによる「過酷な環境」の設定があります。

そしてリコが「残酷な環境」に身を置きながら、たくましく「未知」を追い求める姿が描かれます。

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画像はメイドインアビス(左:1巻 右:3巻)より

「未知を追う者」の象徴として描かれるリコ。そして、作中で最も残酷といわれるシーンに関わっているナナチ。

1930年代の人々が「シュールレアリスム」に希望を見出したように、ある悲惨な境遇から「絶望すべき者」として描かれるナナチにとって、リコの存在が希望(=生きる理由)となっています。

この構図こそが『メイドインアビス』が描き出す「未知」というテーマです。

結論

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そしてニゲロオリゴ糖さんがどうしても伝えたかったもう一つの結論がこちら!

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画像はメイドインアビス(左:4巻 右:4巻)より

ナナチの魅力は計り知れません^^

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