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『戦国妖狐』読める週末は絶対最高

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代表・米村と副代表・新見の連載がスタート。ふたりが毎週火曜に週替りでブログを書いていきます!

代表/副代表が普段考えていること」「お互いが書いた記事への意見」「お互いに言いたいけど言いにくいこと」などなどが書かれていきます。

戦国妖狐』読める週末は絶対最高

 にいみなお(Twitter@NAO_NIM


代表のちゃんよねも書いていた通り、最近オフィスが移転して、いま人生初の電車通勤を体験中の新見です。

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Netflix視聴が捗るので、意外と悪くないなと思い始める今日この頃。

KAI-YOU.netの方も、サイトの構造を変えたりして夏はものすごい好調で、それまでの3倍以上のアクセス数(PV)が出ました。

そんなことはどうでもよくて、今日10月20日から3日間、 無料公開されている傑作漫画『戦国妖狐』を今すぐebookJapanで読んでくださいという話をするためにブログを更新しました。

戦国妖狐』を読むべき5つの理由、みたいなタイトルにしたかったのですが無理でした。理由はたった一つで、めちゃくちゃ面白いから。

去年、ebookJapanで企画された各媒体の編集長が選ぶオススメ漫画企画で、僕は2作のうち1作として『戦国妖狐』を選んだ。

水上悟志という漫画家は、胸滾る物語を数々生み出してきた人で、よく2chなどで突発的に開催される、漫画好きによるマウンティング合戦なんかではほぼ必ず挙がっている『惑星のさみだれ』の作者、と聞くとピンと来る人も増えるかもしれない。

さて、今すぐebookJapanに飛んでほしいところだけど、まだ離脱してない人のために簡単にご紹介。

ネタバレを回避する努力は惜しまないけど保証はしない。

失われた者を取り戻す 行きて帰りし王道の物語構造

物語は2部構成。

戦国時代の日本を舞台に、「闇(かたわら)」と作中で呼ばれる妖怪が跋扈する世界で、人間と闇が入り乱れている。

1部では、そんな乱世で、人間嫌いで闇になることを望んでいる主人公の少年と、人間を愛し闇と争わずに暮らせる世界を実現したいと思い描く妖狐の少女という奇妙なコンビによる旅路が描かれる。

前半から魅力的なキャラクターがわんさか登場するけど、1部の終わりで、中でもひときわ強く筆者が惹きつけられた人物が、あっさり物語から切り離されてしまう。

そして2部では、1部の主人公と対立する立場にあった人物が主人公に。

2部では、その主人公と、切り離されてしまった人物と深く関わり彼を取り戻そうとする者たちとの旅路を、1部と同じく読者は辿っていくことになる。

この超ざっくりしたあらすじだけでもわかること、それは、『戦国妖狐』が失われた者を取り戻す“行きて帰りし”王道の物語構造となっていること、そして、敵だった人物が主人公になることからもわかる通り、1部で描かれた物語を別の視点で描き直してもいる、ということだ。

「あーそれ絶対好きだわ」ってピンと来た人は今すぐebookJapanにアクセスを。

さすがにそろそろネタバレ不可避!

大切なものを取り戻す旅

戦国妖狐』後半の本筋は、もちろん、失われた人物を取り戻す物語だ。

そして、もう一つの軸として、2部の主人公・千夜の変化にある。千の闇を宿し力を叩き込まれた少年・千夜が長い時間をかけて自分と向き合う姿が描かれる。

この2つの物語が、周囲を巻き込みながら展開される。

人間が嫌いで闇になりたいと願った青年、惚れた闇を人間にしたい一心で多くの人間や闇を犠牲にし続けた老人、虐げられる者のために力を得たいと望んだ百姓、大切な人たちのいる世界を守るために時を彷徨う民たち。

もちろん、人間だけじゃない。

情に厚い酒好きの猩々たち。圧倒的強さで闇にも恐れられる、誇り高く孤独な龍。無限に広がる雲の化身にして、退屈に明かした空の支配者・万象王。感情の動きが読めない、気まぐれそうな地神。

大切なものを取り戻す旅は、多くの人や闇との関わり合いを避けられない。

自分が本当になりたかったものとは

物語にも色々あるけど、一番の王道は、抵抗する者の姿を描くことだと思う。

抵抗の対象が明確な敵として現れる場合もあれば、周囲の偏見や社会の常識に立ち向かうことが物語になる場合もある。

あるいは、「こうありたい」と願う自分自身と折り合いをつける、身近なテーマとしても描かれる。

そして、中でも一番わかりやすい王道中の王道がたぶん「運命に抗う」というテーマだ。

戦国妖狐』で描かれているのはその「運命に抗う者」なんだけど、ここでは、運命は必ずしも因果の輪から外れたものとしては描かれていない。

なぜそれを引き受けなければいけないのか。現実は理不尽で、運命には本来理由なんてないんだけど、物語がそうでなければいけない決まりもない。

誰が、なぜそれを望んだのか。それが因果としてそれぞれの身に降りかかってきている。運命をテーマにした物語の本筋と、それぞれが抱える一番私的な「個」の物語とが直結する瞬間が訪れる。

そして、出会いと別れを重ねる中で、絶大な力を持ちながらそれを振るうことを拒んだ少年がやがて青年になり、自分の力と折り合いをつけていく。

めんどくさいごちゃごちゃで何度も見失いかけるたびに誰かにひっぱたかれながら、ようやく「自分が本当になりたかったもの」に帰着する。

戦国妖狐』の旅は、自分が望んだ自分には、自分だけではなれないっていう矛盾と希望にたどり着くまでの道程だったんだと俺には思えた。

最後には、悟りを開いてみせたところで人生は続く、というシンプルな事実もまた横たわっている。

2008年の連載から2016年の完結まで、8年かけて描かれたこの旅路に興味が出た人は是非一緒に歩いてみてください。ebookJapanで。俺はKindleで全巻揃えてるけどな!

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