週刊KAI-YOU vol.9 |Post dpi展の終わり|
■Post dpi展クロージング
8月2日から開催されていた、KAI-YOUが運営に携わっているビジュアルネットレーベル・Recodeの初めての展示「Post dpi」の会期がとうとう終了。ご来廊頂いた皆さま、ありがとうございました! 改めて作品と会場の様子を写真で振り返ってみます。
会場入口
入り口からの光景
Houxo Queさんの作品。アナログで描いたものをキャンバスにプリントし、さらにプリントの上からアナログで描き……という工程を繰り返しています。
ジークレープリントという600dpiで出力される特殊な印刷技術を使っており、細部の表現度が高く、オリジナルとコピーの境界が希薄化されています。
同じくジークレープリントを用いた上で、アクリル板をマウントした杉山峻輔さんの作品
通常の印刷では潰れてしまう微細な線が、髪の毛一本分まで再現されています。
ニューヨークから届けられた山口歴さんの作品。奥のiMacはSkypeに繋がっており、山口さん自身に作品を解説して頂くことができる形になっていました。
Facebook上で見かけた友人の友人の写真をモチーフに鏡や樹脂などを用いて描かれた作品。生で見るとさらに迫力があり、しばし立ち止まってしまうほどです。
Recodeのキャンバスプリント技術を用いて作られたTOKIYAさんの作品。4つのピースから1つの場面が描かれています。
TOKIYAさんが得意とするデジタルでの「厚塗り」という表現が、キャンバスにプリントされることで、フラットな画面なのに厚く塗り重ねられている、という状況が作られています。
また会期終了直前の12日(日)には、会場のHidari Zingaroにて、参加作家のHouxo Queさん・山口歴さん・杉山峻輔さん・TOKIYAさんの4名と本展キュレーターの大楠孝太朗さん、そしてゲストにライター/キュレーターの塚田ありなさん、Arts and Lawやクリエイティブ・コモンズなどで活動されている弁護士の永井幸輔さんをお迎えしてUstream配信を行いました。終盤には急遽飛び入りで、アーティストの谷口真人さんにもご参加頂きました。
前回のエントリでも触れたように、今回はデジタルとアナログ、あるいはコピーとオリジナルのあわいを行き来するかのような作品達を展示させて頂いた。Ustでは「価値はどこにあるのか」をテーマに、それぞれの作品をベースに議論が行われた。特にデジタル作品とエディションについての関係や、アート作品を購入するというコレクターと作家間のコミュニケーションの価値などの話題が盛り上がる。ゲストのお二方からの提起もあいまって、終了予定時間を越えてトークが繰り広げられた。 1980年以降に生まれた世代の作家たちが、もはや日常化したデジタルツールと自身の作品についてそれぞれの立場を表明しながら意見を述べ合うという機会はあまりなかったように思い、個人的にも大いに刺激を頂く。アーカイブが残っているのでぜひともご覧頂きたい。
http://www.ustream.tv/recorded/24650963
無事展示が終了して振り返ってみると、会期中に色々な人とお話することができたのだが、お一人ずつに展示のコンセプトや作品の説明をしていると、Recodeというサービスで自分たちが何をしていきたいのかということが明確になっていく感覚があった。「これからRecodeはどう展開するの?」と尋ねられることも多かったので未確定な部分も含め少しだけほのめかすと、コンセプチュアルな現状の作品ラインは残しつつ、よりプロダクトとしての価値を高めたハイグレードなラインを用意したいと考えている。重要なのは、Recodeそれ自体は作品ではなく、Webサービスでありレーベルであるということ。いわば入れ物であるため汎用性が高いので、様々な作家さんやプロジェクトとのコラボレーションも積極的に行っていきたい。実は某ネットレーベルとのコラボレーションや、某展示会への出展なども予定していたり……。早く決定事項としてお伝えできるよう、大楠さんと頑張っていくつもりなので、どうぞご期待ください!